わかりやすい演奏とは
わかりやすい演奏とは、そもそもどうわかりやすいのだろうか?
「演奏者のやりたいことが理解しやすい」なのか、「抽象化、重要な部分に、よりフォーカスした聴きやすい演奏」なのか、悪い言い方をしてしまえば「(クラシックに耳が慣れていない)お客さんに媚びた演奏」なのだろうか…
僕が大学で2年間習ったピアノの先生は、よく「あなたの演奏はわかりやすくて派手だからお客さんにウケやすいのよね」などと言われていたという。一方、そういう派手な演奏だったがために、コンクールで一位を貰えなかったらしい。
「わかりやすい演奏=短絡的」だとは、僕は必ずしも思わない。
演奏者の意図やタッチ変化や要素が多すぎて、普通のお客さんでは把握しづらい、難しい演奏の方が優れているなんてことも無いと思う。
少し違う話かもしれないが、「抽象化こそ、人間の最も重要な思考機関であり、最大の武器である」と聞いたことがある。
音の一つ一つにそれぞれ意味を持たせた演奏はもちろん凄いが、難しい技巧的な曲や、現代音楽を巧みに手のひらの上で転がせて聴きやすくするのも同じぐらい凄いことだと思う。